総督や警察官らの官僚に対する描写
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•台湾歴史博物館 提供 •台湾歴史博物館 提供

台湾を統治していた際に、官僚のトップに立っていたのが総督であるが、初代の樺山資紀から最後の代の安藤利吉に至るまで、全部で19人いた。台湾の漢文詩人の作品においては、人民を愛し統治に尽力し卓越した功績をもつ者として好印象を持って描かれることが多かった。そして官僚の最下位にいるのは台湾の人々に「殿」と呼ばれている警察官であった。「杏仁茶の出店をやっていたら、警察官が現れたので逃げ回ったところ、茶碗を四つ、五つ割ってしまった、警察官に捕まえられて警察局に連れていかれ、両足をぴったりと揃えて、警察官殿、もうやらないから勘弁して」というような台湾歌謡がある。この歌謡は日本の警察官の厳しいイメージを表している。台湾の新文学の中には、賴和や楊守愚、陳虛谷、蔡秋桐らの作品においても似たような表現が見られる。しかし、その中でもわが子のように人民を愛する警察官も描かれていた。もっとも知られているのは、嘉義県東石郷の富安宮に祭られている「義愛公」のモデルである森川清治郎や、作家の楊逵と深い友情で結ばれていた入田春彦である。